<優しいお客さん2>




数週間前にも「優しい人」について書きましたが、ほかにもたくさんいましたのでその方たちを紹介したいと思います。

まず、「優しい人」と僕が感じるにはある前提があります。それなくしては「優しい人」と感じることはできません。その「ある前提」とは、「購入してくれる」ことです。当たり前のようですが、この前提はとても重要です。

「購入してくれる」人でなければ、僕と接点を持つことができません。そして、会ったときに笑顔で接してくれることも必要です。不愛想なお客様では僕としましても「優しい」と感じることはできません。笑顔でお金を払ってくれる人が優しい人です。

Aさんは50代半ばくらいの方でしたが、僕が訪問する時間は必ず在宅してくれていました。前に書きましたが、僕はお客様ごとに訪問する時間をできるだけ固定していました。僕が訪問する曜日と時間が決まっていましたので優しいお客様はその時間は在宅するようにしてくれていたわけです。

ちなみに、僕が販売していた野菜は品質はそれなりだと思いますが、価格的にはスーパーには負けている価格でした。すべての業界に当てはまりますが、企業が商品なり製品を販売する際は「品質で勝負する」のか「価格で勝負する」のかを決めておくことが大切です。僕が取引をしていた企業は価格ではなく品質で勝負をする企業でした。

そもそも僕がこの企業を選んだ一番の理由もそこにありました。無農薬の野菜をお客様にお届けするというコンセプトを掲げて起業していた企業だったからです。農家と直接契約をして野菜を仕入れる方法をとっていました。しかし、僕が辞める頃は資金が回らなくなったようで、農家からの仕入れができなくなり市場から仕入れるようになっていました。

それはともかく、Aさんが購入する野菜はいつも決まっていました。訪問したときは最初にインタフォンを押すのですが、僕が挨拶をした段階で購入する数量を伝えてから出てくるのです。ときたま目当ての品がないときは「ちょっと待ってて」と、出てきてから品物を選んでくれました。どちらにしましても、なにかしら必ず購入してくれていました。

Bさんは40代後半の方で、品物ではなく金額を決めていたようです。前に書きました「優しい人」は2千円くらいを「適当に見繕って」という品物には無頓着なお客様でしたが、Bさんはしっかりと品物を見定めてから500円~1,000円くらいの間を購入する方でした。「適当に見繕って」もいいですが、品物を見てから買ってくれるのも「真面目に買ってくれている」ようでうれしさがあるものです。

60代半ばに見えるCさんは僕が行くたびに「おじさん、身体は大丈夫?」と僕の体調を気にかけてくれるお客様でした。この方も買う品物は決まっていたのですが、一つ600円くらいの単価としては決して安くない品物を複数個買ってくれている方でした。しかも、帰りがけに必ず僕にお土産をくれました。お土産とはジュースであったり果物であったりお菓子であったりといろいろですが、励ましの言葉とともに笑顔でくれたのには本当に尊敬の念を感じていました。

僕が取引をしていた企業は、始めた当初こそ契約農家から直接新鮮な野菜を仕入れていましたので独自性がありました。ですので、販売していた僕たちにしてみましてもそれなりの自負もありました。特徴のある品物を特徴のある販売方法で売っているという自負です。ところが次第に資金繰りに行き詰まり品物も農家ではなく市場から仕入れる割合が高くなりますと、本来の特徴も薄れていきます。僕はそれが気がかりでもありました。

そのような状況でもお客様たちはずっと変わらず僕から野菜を購入してくれていたのです。このような人たちを「優しい人」と呼ばずになんと呼びましょう。

「優しい」人はほかにもいました。

また次回。







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