<優しい人3>




優しい人の続きです。

僕が属していた会社は基本的に高級住宅街をルートに入れていました。研修期間中に社長と回ったことがあったのですが、社長が会社の方針をそのように話していました。

この社長とは入ってすぐにちょっと揉めたことがありました。原因は僕が生意気だったことに尽きます。

社長についてはこの会社の面接のときに少し触れただけですが、40才くらいの眼鏡をかけた177センチくらいで痩せた感じの人でした。アトピーのようでいつもどこかしらを掻いていたような記憶があります。

社長は元々は関西の人で東京に出てきて薬関係の仕事をしているときに、今の会社の創業者と知り合い、社長を依頼されたとのことでした。ちょっと記憶が定かではないのですが、薬関係と言いましてもコンサルタント系の業種だったと思いますが、その業種について僕が何かしら批判めいたことを指摘したところ、とても不愉快な表情になり反論をしてきました。ちょっと気まずい雰囲気になってしまいましたので話題を変えて事なきを得たのですが、僕には変に正義感ぶるといいますか、誰から構わず倫理的に問題があるところを指摘する習性があります。それがつい出てしまったのです。

研修は日にちによりトレーナーが変わっていました。社長と気まずくなったのは社長と初めて研修で一緒になった日だったのですが、翌日も社長が研修をすることになりました。しばらく一緒に回り、販売方法などについて教えてくれていたのですが、ひと段落して公園の端で休憩をしていたとき、社長が思いもかけないことを言ってきたのです。

「昨日、前の仕事についていろいろ言われて反論したんですけど、よく考えたら円山さんの言うとおりでした。自分はそれが嫌で前の会社辞めたんです。すみませんでした」

と、自分の非を認める言葉を投げかけてきました。まさか謝罪されるとは思っていませんでしたので驚きでした。…言ってみるものですねぇ、本心を。ですが、よくよく考えてみますと、相手は社長でこちらが部下の立場です。僕のほうが失礼な振る舞いをしていたことになります。社会的倫理は僕に部があったとしても、そのときの状況としてはあまり褒められた振る舞いではありませんでした。と、反省したのでした。

話を戻します。
会社のルートは高級住宅街だったのですが、たまにルート開拓という意味合いでルートに入っていないお宅を勧誘することもします。ある日、新規を獲得するためにきれいな門構えの家のインタフォンを押しました。中の庭を見ますと、きれいに手入れをされた色とりどりの花が咲き誇っていました。

インタフォンで訪問理由を話しますと「そうですか。じゃぁ、ちょっと待ってて」と70才前くらいの男性が出てきました。僕が野菜を見せながら説明をしますと、男性は穏やかに「大変ですね。でもね、自分で言うのもなんだけど、この辺のような高級住宅街ではリヤカー販売は無理なんじゃない」と返してきました。

結局、少しだけ世間話をして失礼をしたのですが、高級住宅街に住んでいる人が「自分で高級住宅街って言うのもなんだけど」という言い方が面白くて今回紹介しました。

でも、高級住宅街に住んでいる人って意外に買ってくれるものなのですよねぇ。

今週のタイトルは<優しい人3>なんて書きながら、内容は違っていましたね。

それでは、次回。







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