<配送の人>

お店を営んでいますと、お客様以外にもいろいろな人と接することになります。そんな中で接する頻度が高い人は問屋さんの配送係の人です。営業の人は新しい商品が出たときなどに訪問しますが、2~3ヶ月に一度くらいですので会う頻度としてはあまり多くありません。それに対して配送係の人とは週に数回会うことになります。

ある問屋さんの配送の人は20代半ばの若い方でしたが、結婚もしていてお子さんもいるとのことでした。外見も真面目そうで仕事に真摯に取り組んでいることが伝わってきました。しかし、1年もしないうちに辞めてしまいました。

退職した理由は定かではありませんが、それまでいろいろな話をする中で想像するにはやはり待遇に問題があったように思います。お給料については人それぞれ満足度が違いますのでなんとも言えませんが、お給料以外の面で不満があったことは想像できます。

ほかの問屋さんはわかりませんが、そこの問屋さんでは事故を起こしたとき3万円を自己負担する規約になっていました。会社側からしますと運転を慎重にやってもらおうという発想でしょうが、働く側しますと会社から責任を押しつけられていることになります。僕もそれを初めて聞いたときは憤りを感じたくらいです。

会社は従業員を守る義務があると思っていますので、数万円とはいえ会社の業務を行っているときに従業員に負担を押し付けるのは納得できないものがあります。しかし、その若い方のあとを引き継いだ方は50代半ばの方でしたが、配送業界では普通のことと話していました。配送業が長いと考え方も違ってくるようでした。

50代半ばの方は話し方が優しそうで感じのよい方でした。いろいろ話すうちにその方は独身で年老いた母親と二人暮らしをしていることがわかりました。なにかの拍子で話題がガンの病気になったことがありましたが、そのときに「私も大腸ガンになりまして、人工肛門をつけているんですよ」と淡々と話すのです。

配送の仕事は重い荷物を運ぶこともあります。つまり力仕事というわけですが、そのような業種を「人工肛門の人ができるのか?」と驚きました。ですが、その方曰く「別に問題なく大丈夫ですよ」とのことでした。その方の精神的強さに感激しました。

その方とお話をしていますと、会話のところどころに年老いたお母さまが登場するのですが、その言い方が素朴でまた面白く毎回楽しい会話をさせてもらっていました。

違う曜日に来ていた配送係の人は60才を越えたくらいの白髪が多く、眼鏡をかけていて神経質そうな方でした。実は、最初の頃は不愛想で感じが悪かったのです。ところが、僕があと数ヶ月でお店を畳むお話をしますと、これまでとは打って変わって笑顔で感じのいい態度に変わりました。

同情したのかわかりませんが、余った商品をただでくれたり本来配送日でない曜日に届けてくれたり、となにかにつけて配慮してくれました。普通は、今後は取引がなくなるのですから対応に手を抜くものです。しかし、その方は反対に僕が廃業する最後の配送まで丁寧に接してくれていました。

僕は、「自分が困っている状態のときの接し方にその人の本性が現れる」思っています。その方の本性はまさしくやさしい人でした。

配送という仕事は肉体的に生易しい業務内容ではありません。重い荷物を積み込むのも大変ですし、朝早くに出勤しなければいけない仕事です。ですが、待遇的にはあまり恵まれているとは言えない職種です。僕はこそのような職種で働いている人が好きなのですが、このような職種の待遇がもっとよくなればいいな、と思っています。

また来週。

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