<職人さん>

雨が降りますと売上げは落ちます。これは店舗を構えている業態では致し方ないところですが、人通りが少ない景色を見ているのもなんとなく楽しいものです。また、雨の日に買いに来てくださるお客様は本当にうれしいものです。

ある雨の日、自転車の買い物かごに荷物をたくさん入れた50才半ばくらいの女性が買いに来てくださいました。普通のお客様よりもたくさん購入してくださるお店にとってはとてもうれしい方でした。支払いを済ませると、愚痴とも世間話ともとれそうな感じで話しかけてきました。その話し方にいやらしさが全くなかったのが印象的でした。

実に自然に、「うちの旦那は職人なんだけど、雨の日って仕事がなくなるから大変なのよねぇ」とはじまりました。しかし、その話す雰囲気からは旦那さんを責める感じもなくただ事実を嫌味っぽい感じではなく話しているのが好感でした。「いやらしさがない」とは「自然に」いう意味です。

商売はある意味職人さんと同じ境遇です。会社員のように安定した身分ではありませんし、ボーナスもありません。月によって収入にばらつきがあるのも共通しています。職人さんと商売の違いは売上げを上げる努力をする伸びしろがあるかどうかです。商売は工夫をすればというか工夫をする才能があれば収入を上げることができますが、職人さんは自分から収入を上げることはできません。親方とか依頼主が示す日当で収入は決まります。その女性はそんな話をしていました。

女性が僕に身の上話をしたのは同じ境遇だからでしょう。似たような境遇ですので安心して話せたように思います。やはり会社員の人を相手には伝わらないお話です。僕はいろいろなバイトをしていますが、交通誘導員の仕事もしたことがあります。その仕事のときの同僚で多くいたのが職人さんまたは元職人さんでした。ある人は大工さんでしたが、大工さんという職業は専門的な技術を身につけていますので交通誘導員などではなく大工さんの仕事がいくらでもあるように思えましたが、同僚の話では大工さんは余っているそうです。

先日、電気工事関連の仕事をしている方とお話をする機会がありました。その方の現在の仕事で多いのが不動産管理会社からの電気工事だそうです。電気工事の仕事も職人さん同様に専門的な知識または技術を身につけていますので仕事にあぶれることはないように思いましたが、最近は大変なようです。

その方のお話では昔は電気工事の資格を持っているだけでよかったそうですが、現在はそのほかに電気工事を請け負うための資格が必要になるケースが多いそうです。その資格を持っていないと管理会社からの仕事を請け負うことはできないようでした。

僕がどのようにして仕事を見つけるのか尋ねたところ、「集まりに出かけて仲間を作ることかな」と話していました。意外に地味だったことに驚かされたのですが、普通の会社の営業と同じような発想です。その人は「顔なじみなっても実際に仕事を紹介するまでに半年くらいかかるかなぁ」と話していました。まさに営業そのものです。職人さんも営業のスキルを身につけていませんと生き残っていけないようでした。

僕はコロッケ店時代に店舗を引っ越していますが、その引っ越し先の工事は工務店ではなく職人さんにお願いしました。最初は工務店に見積もりをお願いしたのですが、僕ができるだけ「安くお願いしたい」と話したところ、その方の知り合いの職人さんを紹介してくれました。

結局、その個人の職人さんが知り合いを寄せ集めて7坪のスケルトンに4坪程度の店舗を作る仕事だったのですが、工事をはじめてから完成するまでに2週間ちょっとかかることになりました。工事をする日が職人さんの手が空いている日に限られたことが理由でしたが、この方法が正解だったのか今でも判断がつきかねています。

実は、この職人さんとは途中で少し揉めたのですが、一般の人が職人さんと交渉するのはなかなか難しいものがあります。なにか工事を依頼するときは、一般的には工務店が間に入ってそれぞれの職人さんをまとめるケースがほとんどです。僕は自分で職人さんと交渉したのですが、工務店が間に入るメリットが少しわかるような体験でした。

また来週。

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