<ジャーナリストさん>




お店を構えていますと、いろいろな人がやってきますが、コロッケ店時代とラーメン店時代で一番違うことは滞在時間です。コロッケ店はテイクアウトですが、ラーメン店はイートインです。言うまでもなくラーメン店のほうが滞在時間は長くなります。

体験談をお読みになった方はおわかりだと思いますが、お店で食事をするイートイン型ではお客様との距離感がはとても重要です。距離感を間違えてしまいますと、お店の存続に影響を与えることもあります。ですから、イートイン型の場合はお客様との接し方は慎重にならざるを得ないのですが、テイクアウト型の場合はある程度気楽に接することができます。

ですから、ラーメン店時代はお客様と親しくなることはご法度でしたが、コロッケ店ではいろいろなお客様とある程度親しくなることもできます。これまでこのコーナーで紹介してきた人は圧倒的にコロッケ店時代のお客様のほうが多いのですが、その理由はテイクアウト型であることにあります。

ということで、今週紹介します「あの人」は自称ジャーナリストさんです。わざわざ「自称」としましたのは、僕には確認することができないからです。有名なマスコミなどで活躍している方ですと、確認することも可能かもしれませんが、ジャーナリストの方がみんな有名とは限りません。中には、表舞台には出てこないジャーナリストがいても不思議ではありません。

以前、書いたことがありますが、30才前後の男性で、コロッケを買ったあとに店頭の横でコロッケを食べながら、お客さんがいないときに話しかけてきたお客様がいました。この男性は、IT関係の仕事をしているそうで、これからのIT業界の展望などについて自説を披露していたのですが、若い男性の中には「自らの精通ぶり」を自慢したい意図でITを話題にする人がいます。

これは、ITに限ったことではないのですが、誰かに物知りぶりを披露したくて仕方ないタイプの人がいます。この若い男性はまさにそのタイプだったのですが、僕が50才過ぎのオジサンでしたので、IT関連は格好の話題のようでした。

しかし、僕は年齢の割にはある程度ITを勉強していますので、ITの話題についていくことができます。すると、だいたいのケースで退散するのですが、そのような人は元々それほど詳しいわけではなく、自慢したいがための話題に過ぎないのです。つまり、「自慢したいがためのITの話題」かどうかは、僕が対応したあとに判明することになります。

今回紹介する方は職業をジャーナリストと名乗っていたのですが、外見からしますと普通の会社員の雰囲気はしていませんでした。髪の毛は肩くらいまで長いですし、浅黒く引き締まった顔だちをしていました。体型も同様でした。

その男性は、幾度目かに来店したときにIT関連の話をしてきてきました。そこで、僕がITの話題に臆することもなく会話を返していきますと、驚いた表情はしましたが、僕に興味を持ったようで自分の仕事についていろいろと話すようになりました。

来店頻度は決まっておらず、2~3日間隔で来店することもあれば、1ヵ月以上来ないこともありました。間隔が開いたときは、「ノソッ」と右側から店頭に来るのですが、その現れ方が「久しぶり」を醸し出していました。

その自称・ジャーナリストさんと知り合って半年ほどで僕は廃業してしまいますので、最後まで本当にジャーナリストさんなのかわからなかったのですが、会話していて「知ったかぶり」の話し方をしたことが一度もないのです。単に、海外の「どこそこに行って来た」というような話はしてくれましたが、詳細に話すこともありませんでした。

今でも、本当にジャーナリストさんだったのかわかりませんが、嫌な印象は全く残っていません。コロッケ屋のオジサンに嘘をついても仕方ないはずですので、本物だったと思っています。

また来週。







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