<クリーニングチェーンの副社長>




先月、クリーニングチェーンの営業部長のお話を書きましたが、実は当時ほかのクリーニングチェーンも調べていました。今回紹介します方は、タイトルにもありますとおり「副社長」という幹部中の幹部の役職に就いている方です。

最初、僕はこのクリーニングチェーンの名前を知りませんでした。僕の生活範囲には存在しないチェーンだったからです。それでも地元一帯では名前が知られていると思われたのは店舗数が40店舗以上あったからです。

僕の生活圏から遠く離れたチェーン店にもかかわらず僕が知ることができたのはフリーペーパーで取次店を募集していたからです。前回も書きましたが、クリーニングチェーンの長所は需要が減らないことです。「一度行き渡ると、終わり」という種類の業種ではなく、需要がなくならないところが一番の長所です。

僕は早速電話で連絡をして訪問の約束を取り付けました。場所は現在のスカイツリーの近くですが、地下鉄から地上に出てすぐのところに店舗はありました。おそらくチェーンの本部も兼ねていたと思いますが、広い店内に受け付けの女性がいました。訪問の理由を告げますと、「少しお待ちください」と受付店内の端のほうの椅子を勧められました。

しばらくすると60才くらいの男性が上着は着用していませんでしたが、きれいにネクタイを締めスラックスをステキに着こなして現れました。僕と妻に笑顔で挨拶をすると名刺を差し出しました。そこには「副社長の」肩書きが書いてありました。

世間話もそこそこに工場を案内してもらえることになり、店舗の裏側に向かいました。やはり、ここが本部であり工場でもあったわけです。しかも工場と呼ぶにふさわしい大きさ広さがあり、流れ工場のように機械が所せましと並んでいました。

この工場を見るだけで、チェーン店の規模が想像できるというものです。僕は初めてクリーニング工場で機械が動く様を見たわけですが、ハンガーにかかったたくさんのワイシャツが整列して順繰りに動いてくようすはまさに壮観という言葉がピッタリな光景でした。

現在、ワイシャツのクリーニング料金は安いところでは100円くらいからあります。高くても250円くらいだと思いますが、この料金を実現させているのはこうした工場のなせる技にほかなりません。人間が手作業で行うのでは到底不可能な料金です。

僕が感動・感激をしていますと、副社長は「それでは、ほかの店舗をご案内しましょう」と行って道路に向かいました。道路までの道すがら副社長からお話があり、

「実は、車でご案内するつもりだったのですが、たまたま車が使えなくて、今日はタクシーで移動します」

ということになりました。

最初に向かった店舗は間口が5メートルくらいでしたが、副社長のお話では「シングルマザーが一人でお店を回している」とのことでした。一人で子育てをしながら取次店を運営していることになりますが、その事実は「生活できるだけの収入が得られることと一人でも運営できること」を示しています。おそらく副社長はそうしたアピールをしたかったのだと想像しましたが、どうでしょう。

そのほかに3店ほど回ったのですが、3店とも店頭にいた方は女性でしたが、取次店を経営しているのは男性ということでした。

移動する道すがら、副社長は僕にクリーニングチェーン業界の動向や実務の話などをしてくれていたのですが、実は、僕の気持ちの中ではこの副社長が副社長でいることに興味を感じていました。このチェーン店はかなり古くから創業しているようでしたが、社長に就いているのは実兄だと聞いたからです。そこに俄然、僕の興味心が沸き起こってきたのです。ですから、移動するタクシーの中では僕のインタビュー願望がさく裂しました。

僕が一番聞きたかったのは、兄弟で会社を経営することの難しさです。僕は経営に関する本をたくさん読んでいますが、兄弟で経営するのは本当に難しいようです。副社長にも「独立を考えることはなかったのですか?」と尋ねました。

この会社は80年代のバブルの前に創業しており、バブルの真っ盛りを経験しています。その当時は銀行が融資を湯水のように行っていましたので、この副社長にも独立する話があってもおかしくなかったはずです。男兄弟の確執はいつの時代も起こっても不思議ではありません。

僕の想像では、副社長に独立をたきつけて一儲けを企んだ輩もいたはずです。バブルとはそのような時代でした。人間は、ナンバーツーよりもトップのほうが気持ちがいいものです。優越感は上に行けばいくほど満たされるからです。そのような時代を経てもなお副社長という役職に留まっていた副社長に興味を持ちました。

しかし、副社長は実に分をわきまえた考えの持ち主でした。たぶん、この企業がここまで成長・成功したのはこのような人格者が幹部に就いていたからだと思います。そんな感想を持ちながら4店舗目を見終わったとき、ちょうどお昼ご飯の時間になりました。すると、副社長はなんと「お昼ご飯をごちそうしましょう」と言って、レストランに入りました。

お昼御飯の間も創業時代の苦労話などいろいろな話を聞くことができて、とても有意義な会社説明会となりました。

最後に結論を書きますと、このチェーンには好印象を持ったのですが、僕たちが営業したい地域とこの会社が展開した地域が離れすぎていたために話はまとまりませんでした。しかし、おいしいお食事をごちそうになり、ビジネスに参考になるお話を聞くことができてとても満足な一日でした。

また来週。







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