<花屋の人>




僕は学生時代にお花屋さんでバイトをしたことがあります。大手スーパーの地下にお店を開いていた花屋さんです。そのお花屋さんは僕が勤めていたお店も含めて全部で3店を展開している花屋さんでした。おそらく個人が開業している花屋さんの平均的な規模ではないでしょうか。

僕が新卒で入社したのはスーパーですが、異動した2店目で花屋さんの社長と親しくなりました。その社長から聞いた話ではお花屋業界では、複数店を展開するのは一般的なようでした。その社長は3店舗を展開していましたが、出店しているのはすべてスーパー内ということでした。社長曰く、「いかにしてスーパーに出店できるかが勝負の分かれ目」だそうです。

僕がバイトをしていた花屋さんも3店舗を展開していましたが、本店と呼ばれていた店舗は自宅を兼ねていました。それがわかったのは忘年会が本店兼自宅の2階で行われたからです。その花屋さんには正社員の従業員が4人いましたが、20代前半の人が2人と後半の人が1人と40代の人という構成です。このほかに各店舗に僕のようなバイトもしくはパートさんが数人いました。

僕が働いていたお店は30代半ばの女性パートさんが責任者として働いていました。僕は授業が終わったあとに3~4時間勤務するシフトになっていました。

学生というのはまだ世の中と言いますか社会を知りませんので、この花屋さんでのバイト体験は僕にいろいろなことを教えてくれました。今の時代はいろいろなバイト先がありますし、また企業にしましてもバイトを雇用するのが普通になっていますのでバイト専用のマニュアルとか研修があります。しかし、当時はそのようなものはなく先輩が自分のやり方で教えるのは一般的でした。

バイト先の花屋さんは、僕のほかに30代半ばの女性パートさんしかおらず、その方が店長の役割を担っていました。ですので、このパートさんから仕事を教わることになります。先ほど「世の中を知らない」と書きましたが、それは「他人から仕事を教えてもらうこと」も経験がないということになります。

年齢を重ね社会人経験が増えてからわかったことですが、意外にこれは重要です。人から教えてもらうには、それ相応の「教わり方」というものがあります。教える側というのは、教わる側がきちんと教わる態度になっていることを重要視するものです。その態度如何で教え方というのも変わってきて当然です。

それはともかく、僕はここで他人から意地悪をされたり、直接文句を言われたりする経験をします。社会の厳しさを知った貴重な体験でした。

まずパートさんは社員がいる場面では優しいのですが、いない場面では「返事をしなかったり」「無視をしたり」することがありました。ドラマなどでは意地悪な人をわかりやすく表すために行う演技がありますが、実際にそのような人に出会ったわけです。毎回意地悪をするわけではないのですが、「お天気屋さん」と言いますかときたま意地悪人間に変身する人でした。今までそのような経験がありませんでしたので、本当に驚きました。

20代前半の従業員の一人とは一緒に働くこともあり、それなりに親しくなっていきました。その人とも言葉の行き違いで険悪な感じになったことがあります。このときは僕の説明が足りなかったことが原因でしたが、相手に丁寧に伝えることの大切さを身を持って体験しました。

この二人に関しては、社会で働きだした最初の経験でしたので今でも鮮明に覚えています。社会で生きるということは他人と接することですのでとても貴重な体験をさせてもらったと60才を超えた今でも思い出すことがあります。

また、来週。







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