<最後に再度本性をむき出したSさん>




この仕事を始めたときの指導係はSさんですが、Sさんの性格の悪さはこれまでにも紹介してきました。女性が多い中で「お山の大将になりがたる」とか「人によって態度を変える」などですが、僕が仕事に慣れ始めてからは僕に悪態を取ることはほとんどありませんでした。

それどころか、胸襟を開いた同僚といった感じで接していました。実際、お互いの仕事を助け合ったり女性責任者に対する対応などでも不利益を被らないようにお互いに配慮したりなどしていました。

しかし、前々回書きましたように、仕事時間の途中に怒りで退職した「66才の新人・Tさん」に対しては冷たい態度をとっていました。つまるところ、反撃をしてきそうにない人には徹底的に意地悪をするタイプの人でした。

Tさんが辞めたあとは、人間関係で揉めることもなく平穏に日々を過ごしており、僕とSさんとの関係も表立っては親しそうにしていました。ですから、最後の最後にSさんが僕に意地悪をしかけてくるとは想像もしていませんでした。

それは仕事最後の日から数えて3日目のことです。

お昼時間になり、休憩室に戻りますと女性陣が座るテーブルの真ん中に大きめ箱のお菓子が置いてありました。そのときは「誰かが持ってきたのかな」くらいに思っていたのですが、全員が戻ったところで作業員のリーダーが突然Sさんに「お菓子ありがとう」と言ったのです。テーブルに置いてあったお菓子の箱はSさんが買ってきて置いたものでした。

リーダーがお礼を言うと、ほかの女性陣も順にSさんにお礼の言葉をかけました。すると、Sさんは

「それ、YさんとMさんもお金出してるから」

と言うではありませんか。

…つまり、Sさんは僕をのけ者にしたわけです。これを意図的と言わず、なんと言いましょう。出会った当初から、なにかしらを企む性格の悪さを感じていましたが、最後の最後に性格の悪さをさらけ出してきました。

なんという、卑怯さでしょう!

僕は怒りを通り越して情けなさを感じていました。六十にもなる大の大人がとる行動とは思えません。僕がそのような気持ちでいると、僕の気持ちを察したのか、女性リーダーが僕のほうをチラッと見遣りました。

そのまま休憩時間は終了したのですが、午後の作業が始まるときに女性リーダーが僕のところにやって来ました。

「大丈夫? …私わかってるから…。気にしないで」

と声をかけてきました。

結局、最後の日に僕個人の分として、女性陣に挨拶のお菓子を配りましたが、それにしても最後まで性格の悪さを感じさせたSさんでした。

僕は子どもの頃、大人になったら全員が人徳者になるものだと思っていましたが、自分が大人になるにつれて「それが夢物語であること」を実感していきました。現実の世界では、大人でもずる賢い人や意地悪な性格の人がたくさんいるのです。

その究極の人がSさんでした。

これも人生経験かなぁ、って思った仕事現場でした。

また来週。







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