<店舗の大家さん>




基本的に、コロッケ屋という業態の店舗は小規模です。つまり小さな店構えということになりますが、本部から仕入れた商品を揚げるだけですので店舗は小さくても全く問題はありません。というよりは小さな店舗のほうがコロッケ屋さんのイメージに貢献する部分があります。また家賃とか光熱費などのランニングコストを考えますと、小さければ小さいほどコストが抑えられますので経営的には好都合になります。

僕が構えていた店舗の場所はコンビニの駐車場でしたが、そこのオーナーさんは地元の名士の一族でした。コンビニが入っているビルのほかにもたくさん土地や物件を持っているようで、親族には市議会議員もいました。それほどの人ですので駐車場もとても広くその一角に2坪ほどのプレハブの建物を建てて店舗にしていました。

あとから聞いた話では、コロッケ本部の社長の息子さんがここのオーナーさんを口説いて契約したそうです。オーナーさんは60代後半の方でしたが、このようなタイプの人に多い傾向として、若いビジネスマンのセールストークに乗りやすい性格というものがあります。よく言いますと「若い人を応援する」気持ちですし、穿った見方をしますと「自分の度量を誇示したい」という欲望です。いずれにしろ本部の社長の息子さんは営業がうまい人のようでした。

僕のテキストをお読みなりますとわかりますが、僕はフランチャイズシステムに批判的です。本当に経営ノウハウに自信があるなら「他人に教えるのではなく、自らが実践するのが本来の筋」です。「教えること」で報酬をもらおうとする時点で「教える内容」の無価値さがわかろうというものです。人は価値のあることを「他人に教えない」ものです。それ以前に、絶対に成功する経営ノウハウなど存在しません。ほんの少し産業界を見渡すだけで誰でもわかります。

結局、この本部は僕が加盟してから1年半後に倒産するのですが、それは想定内でした。僕がこの本部に加盟する際の展望は、本部が倒産することであの理想的な立地環境にある店舗が自分のものになると考えていました。

僕が予想外だったのは、現場で店舗を運営している僕にオーナーさんが退出を求めてきたことです。本部が倒産したとしても家賃を支払っているのは僕です。ですから本部が倒産しても家賃が入ってくるのですから本来なら喜んでもよいはずです。ところが、大家さんは退出を求めてきました。しかも最初は「すぐに」と言ってきました。もちろん店舗を運営して収入を得ている僕は受けれ入れることはできません。僕は弁護士さんにお願いして退出時期を半年間延ばしてもらいました。

開店した当初、大家さんは「いい人」でした。店子である僕たちに対して笑顔で接してくれましたし、僕たちが仕事をやりやすくなるように心がけてもくれていました。しかし、本部が倒産したことをきっかけに、対応が少しずつ変わって行ったのです。

一番困ったのは店舗の入口への通り道にオーナーさんが自家用車を置いて通りにくくしたことです。さすがにこれにはクレームを言いましたが、クレームに対する対応も感じのよいものではありませんでした。結局、対応が変わった本当の理由は最後までわかりませんでしたが、終わりのほうは険悪な関係になっていました。

このあと僕は6つほど自宅寄りの駅に移転するのですが、このときはお店の売上げを確保するうえで理想的な立地環境とは正反対の場所でコロッケ店を営業することに挑戦したくなっていました。

また来週。







シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする