<リサイクル業界>




リサイクルという言葉がいつ頃からから世の中に登場したのか記憶が定かではありませんが、僕がチリ紙交換業に携わったときには既に「リサイクルで起業するつもり」と話していた人がいました。今から30年以上前ですが、その当時でもうリサイクル業という業界が社会で認知されていたことになります。

僕が所属していた営業所のチリ紙交換のやり方は、軽トラックでゆっくり走行しながらマイクで「ご家庭に古新聞はございませんか?」と流す方法です。僕が始めた頃はまだ古新聞をリサイクルするという意識が社会的になく、またそのシステムも確立されていませんでした。ですから、僕のようなやり方でも結構集めることができました。もちろんトイレットペーパーと交換するのですが、トイレットペーパーの数などについてもうるさく言う人がいない時代です。大らかな実によい時代でした。

このやり方で一か月ほどやっていたのですが、「もっと効率的な方法」を考えるようになりました。それまでのやり方では日にちによってバラつきが大きかったからです。そこで日にちを決めて回ることにしました。例えば、A地区は毎月3日でB地区は毎月16日というように一か月ごとにスケジュールを決め、そのスケジュールどおりに回ることにしました。

そのために屋号を「紙平」と書いた用紙に日にちを書き込み、初めて出してくれたお客様にその用紙を手渡していきました。簡単に言いますと、固定客を掴もうとする戦略ですが、思いのほかうまくいきました。スケジュールがわかりますとお客様のほうで僕を待ってくれるようになりました。普通のチリ紙交換の人は不愛想なおじさんが多かったのでそれに比べますと若くて真面目そうな青年に見える僕でしたので好印象を与えることができたのも功を奏していたと思います。やはり若さは武器です。

僕のそうしたやり方にも興味を持ったようで起業を目指していた二人は事あるごとに僕に話しかけてくるようになりました。少し先走ったお話をしますと、この二人と一緒に行動をともにするようになってからこの二人の知り合いというセブンイレブンの加盟店主の方ともたまに会うようになります。今になって思い返してみますと、その当時で既にコンビニの加盟店主がリサイクル業に興味を持っていたことになりそれも今から思い返しますと驚きです。因みに、その加盟店主さんは郊外の地主のご長男でした。

なにかの仕事で二人で共同で行うとき、うまくいくかいかないかは二人の関係性にかかっています。体験記や「あなたはこうやってシリーズ」でも書いていますが、うまくいく二人というのは上下関係が決まっている場合です。先輩と後輩とか上司と部下とか、年長と年下とかいろいろなケースがありますが、上下関係が固まっていることは必須要件です。

「上下関係が決まっていない」となにが起こるかと言いますと、「対立」です。「対立」も成功するための通過点であるなら「その対立」も糧とすることができます。ですが、同等の関係の場合は糧とはならず喧嘩の種にしかなりません。

しかし、上下関係が固まっていてもうまくいくとは限りません。成功すればするほど途中で袂を分かつことになります。理由は「能力」という一言に尽きます。上に立つ人が下の人に対して苛立ちを覚えるからです。苛立ちを覚える理由は目指すものが違ってくるからです。

わかりやすいように飲食業で説明しますと、二人で頑張ってお店を切り盛りしていているときはいいのですが、うまくいき多店舗になりますとお互いの気持ちに齟齬が生まれます。その段階で求められる能力はお店という現場を運営する能力ではなく経営する能力です。ここでほとんどの場合、諍いが起きます。決定的な諍いがおきます。そして、二人は別れていきます。今、IT業界で成功している企業はほとんどすべてそのような体験をし、その通過点を乗り越えています。ある意味、創業当時にともに苦労した仲間を切り捨てる覚悟と度量がある人だけが成功の階段を上ることができます。

これは経営の世界だけではありません。音楽の世界でも同様です。最初グループで励まし合って頑張ってきた仲間がある程度成功しますと目指すものが変わってきます。そうなりますとあとは別れるしか術はありません。このような展開をするグループがほとんどなのですが、だからこそ解散することなくずっと二人で続けている「ゆず」はすごいのです。

僕と親しくなりつつあった二人も上下関係がしっかりと固まっていました。







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