<タクシー業界のいろいろ>




電鉄系のタクシー業界の面接を受けた僕ですが、実は電鉄系のタクシー会社はタクシー業界では大手には入っていません。こうしたことは社会経験を積み、いろいろな情報に接することで知ったことですが、タクシー業界には大手四社と言われる会社があります。

日本交通、大和、帝都、国際ですが、これ以外にも有名な会社はたくさんあり、そうした会社も十分「大手」と呼べる規模です。その意味で言いますと、電鉄系のタクシー会社も充分に大手の部類に入ります。僕はその会社に応募したわけです。

大手とそれ以下の会社で一番違う点は雰囲気です。昨年、関西のタクシー会社で有名なエムケイタクシーの創業者がお亡くなりになりましたが、この会社が有名になったのは創業者の青木氏の経営手法が一風変わっていたからです。とにかく従業員を厳しく教育することで会社を成長させてきた経営者でした。

「厳しく教育すること」がマスコミから注目されるということは、それまでのタクシー会社の乗務員がガラが悪かったことの裏返しです。前回書きましたように、いろいろな体験をした人たちが最後に行き着く職場がタクシー会社ですので大手でない中小規模もしくは小規模のタクシー会社は職場の規律が緩やかなのが普通でした。

しかし、僕が応募したのは電鉄系でした。採用する際にも厳しい基準がありそれをクリアしなければ採用されないのです。そうしたことも知らない僕でしたので実にラフな服装で採用面接を受けてしまい、無残にも不採用となりました。そのときの面接官の言葉を今でも覚えています。

「まだ、若いんだから自分で二種免許を取得して、それからまた応募してください」です。募集広告には「普通免許取得者は二種免許資格を取得させ、しかもその間の日当まで保証する」と書いてあったにもかかわらずこのように言われてしまったのです。

結構、ショックでした。タクシー会社の応募に落ちるなんで想像もしてなかったのでかなりショックでした。そして、次の会社は中小規模の会社に応募することにしたのですが、そのときはきちんとしたスーツで面接に臨みました。難しい質問など全くなく、そのまま採用決定でした。因みに、同じに面接を受けた人に僕より2才くらい若い人がいたのですが、若い人が二人も同時に応募したのはとても珍しいことだったようです。

採用面接のときに印象に残っているのが面接官の指でした。なんと左手の2本と右手の1本がなかったのです。当時若かった僕は心の中で「この人、やくざ上がりなのかな」と思ったものです。真相はやぶの中ですが、10本のうち3本もなかったなら、誰でもやはりちょっとマイナスイメージが浮かんで当然です。

採用されてからすぐにやることは二種免許を取得することです。僕と若い人とあと一人中年のおじさんと3人で二種免許を取得するための学校に通うことになりました。この学校というのは古いビルの一室にあるのですが、そこは僕を採用した会社からだけではなく、近隣のタクシー会社で採用された人が集まっている学校でした。つまり二種免許を取らせるための専門学校というわけです。そこに集まった教習生は総勢13人くらいいたでしょうか。

学校とはいえしっかりとした設備があるわけではなく、教室があるだけです。なにしろやることはその部屋からマイクロバスに乗り教習所に行って講師の厳しい指導を受けるだけです。教室は単なる集合場所ということになります。

この学校は講師が2人に校長が1人の構成だったのですが、校長は中年の小柄な女性でした。しかし、かなり威勢がよく教習生を大きな声で怒鳴りまくっていました。教習生は全員男性で中年以上の方がほとんどですから、舐められないために意図的に怒鳴っていたと思います。どのような経緯で二種免許取得の専門学校を開校することになったかはわかりませんが、酸いも甘いも経験した人にしか出せない迫力が出ていました。

来週に続く。







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