<皮膚科の先生>




昨年末のことですが、突然左手親指の腹の部分に3ミリくらいの穴が開いてしまいました。それまでは血豆のような感じで出っ張っていただけだったのですが、朝起きたらそれがつぶれ、血がかなり出ていました。

そのときは絆創膏を貼って収まったと思っていたのですが、1週間2週間経ちますと、今度はそこから肉が飛び出てくるような感じになってしまいました。その肉の出っ張り具合が見ていて気持ち悪いくらいでしたので、皮膚科に行くことにしました。

この皮膚科の病院はこれまでに幾度か行っていますが、久しぶりに行ったところ、以前とはかなり印象が変わっていました。印象が変わったのは、看護師さんの雰囲気もそうですが、先生も前より話しやすく明るくなった感がありました。

僕は成人してから55才まで病気らしい病気をしたことがなく、ほとんど病院に行ったことがありません。しかし、コロッケ店を廃業してからしばらくして心臓の調子が悪くなったことを皮切りに、病気が押し寄せてきました。ですので、それ以降いろいろな病院に通うようになっています。

いろいろな病院に行くということは、当然いろいろな医師に会うことでもあります。この世に同じ人間がいないのと同様、医師もそれぞれ性格も考え方も違います。そこで今回より幾度かにわけて僕が出会った医師の方々について書くことにしました。

そこで、最初に紹介しますのは皮膚科の医師です。その皮膚科に行くことになった最初は10年くらい前でしょうか。朝、起きますと背中一帯に赤い斑点が広がっていました。そこで皮膚科を探したのですが、病院探しで一番求める要因は「混んでいないこと」です。

待ち時間ほどもったいないことはありません。ですから、あまり患者さんがいないことが第一要件ですが、ネットで探したところある病院が見つかりました。早速自転車で向かいますと、なんと廃院していました。そこで、少し走りますと、たまたま皮膚科の看板が見えました。待合室を見ますと患者さんが一人もいませんでした。

扉を開けますと、受付があったのですが、中にいた制服を着た若い女性は、なぜかキャピキャピしている雰囲気を出していました。髪の毛を染めているのもわかりましたし、厚化粧でもありました。

ほかに患者さんがいませんので、少し待ってすぐに診察室に呼ばれたのですが、そこには40代半ばの男性医師がいました。背中の赤い斑点を見せますと、医師は開口一番こう言いました。

「なんでしょうねぇ…」

まるで会社の休憩時間に同僚と世間話をするような感じでそう言ったのです。「とりあえず、塗り薬を出しますので、様子をみましょう」と診断を受けたのですが、僕がめくりあげたシャツをジーパンにしまった瞬間、医師のうしろにあったカーテンが勢いよく開かれました。

そして、そこには看護師さんが2名姿勢正しく立っていました。理由は謎ですが、看護師さんたちは、診察をする間、カーテンのうしろで「気をつけ!」の姿勢で立っていたことになります。

「この病院大丈夫なのかな…」。…ちょっと異様な感じがしました。

待合室で清算を待っているとき、たまた診察室に通じる廊下のほうに目をやりますと、医師が診察室から出てきて僕を見ていました。その光景も不思議な気持ちにさせられました。

心配になり、帰宅してから自分の症状をネットで調べたところ、自分に当てはまりそうな病名が見つかりました。対処法を見ますと、「赤い斑点は、数日すると自然に消える」と書いてありました。それほど心配する病気でもなさそうでした。

実際、赤い斑点はなくなり、その後再発することもありません。結局、皮膚科に行った意味はあまりなかったことになりますが、僕はその後皮膚の疾患のときはその病院に行くことにしています。理由は、「混んでいないから」です。

人の出会いとは不思議なものです。

つづく…。







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