<従業員のリーダー>




どんな集団なり組織でも効率的に動かそうと思ったなら、集団を管理する人とその人の下で現場を統率する人が必要です。スポーツチームに例えるならキャプテンという役割です。キャプテンは現場のリーダーですが、現場で動いている人と管理者の意思疎通をスムーズにするための存在です。

今回綴りますのは清掃集団でキャプテンの役割を担っていた方です。ですが、管理者の立場である責任者に任命されてキャプテンの役割を担っていたわけではありません。もちろんキャプテンと呼ばれていたわけでもありませんが、日本ふうに俗な言い方をしますと「仕切り役」といった感じです。

その仕切り役はTさんという方でしたが、僕が入ったときはすでに仕切り役になっていました。責任者からはわからないことがあるときは、Tさんに質問するように言われていました。仕切り役と言いますと、「ズケズケ物事を言って自分の思いどおりに他人を動かす」イメージがありますが、Tさんは全く正反対でした。

年齢は60才過ぎくらいで体格がとても小さく、身長はみんなの中で一番低く痩せている体型でした。そのような人が仕切り役を行っていたのは女性責任者の方に信頼されていたからです。つまり、責任者の方はなにかしらの伝達事項があるときは、必ずTさんに伝えていたのです。ですから、自然にTさんが仕切り役を任されることになったようです。

ではなぜ、責任者の方はTさんを仕切り役にしたかと言いますと、働いている人みんなから慕われていたことと、責任者が御しやすいと感じたからだと思います。清掃員の中には責任者に反抗的な態度をとる人もいましたので「御しやすさ」は大切です。

「御しやすい」という言葉は嫌な響きがしますので言い換えますと「接しやすい」です。組織では意思の疎通はとても重要です。上司と部下の関係をスムーズにするには上司が部下に対して「接しやすい」と感じることが部下にする際の必須要件です。

前に書きましたように、仕事に入ったばかりの頃、僕の指導係りをしていたSさんは悪い人ではありませんでしたが、進んで僕と親しくしようとはしていませんでした。初めての職場で知らない人ばかりの中でポツンと一人でいるときに、それとはなく声をかけてくれたのはTさんでした。Tさんは心配りのできる人でもありました。キャプテンに相応しい人柄です。

勤めだして2ヶ月を過ぎた頃、たまたま二人きりになったときに「自分はある大手宗教団体に入っている」と教えてくれました。しかも「別に勧誘しないから安心して、私そういうの嫌いだから」と話したのです。Tさんの話では「宗教団体では勧誘のノルマがあるそうですが、自分はほとんどやっていない」とのことでした。実際、最後まで一度も勧誘されたことはありません。

またあるとき、たまたま周りに人がいない状況になったときに、身の上話を聞かせてくれました。旦那さんとは離婚していて今は一人で暮らしていることや離婚前には旦那さんが外国に行ってしまい生活が大変で役所に相談に行ったことがあることなどを話しました。その話し方も、苦労話をするような口調ではなく淡々と過去を振り返る感じで悲壮感がある感じでもなく、「これからもなんとかなる」といった感じでした。

「それにしても世の中にはいろいろな人がいるものだ」と実感したのですが、苦労している人の共通点として宗教団体に入っていることがあります。僕からしますと、宗教団体は苦労している人に近づいて勧誘するマニュアルがあるように思えます。コロッケ屋を廃業する際も、変な新興宗教の人が「入信すると、これからいいことが起きますよ」としきりに勧誘に来ました。「廃業→悲しい→苦しい・辛い→心の隙」という魂胆だったと思いますが、苦しんでいる人を勧誘するのはズルいですよね。

また来週。







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